「正しいお母さんってなんですか!?」を読んだ話

本の話
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インスタでよく漫画の一部が流れてきて、ついつい気になって買ってしまった。

帯の『令和の子育てハードモードすぎ!』というキャッチコピーがぐさっときた。

聖母じゃないのは、みんな一緒。

『正しいお母さんってなんですか!?』

タイトルからしてまさに普段気にしていることだが、読み始めると……

「わかる、わかる〜!!」共感しかなかった。

共感ポイントが多すぎてページをめくる手が止まらない。普段モヤモヤと思っていたことを、ガッツリ言い切ってくれてハッとさせられる。

赤ちゃんは尊い。でも「もともと子どもがだーい好き!」ってわけではない女性がママになった時の心情がリアルに描かれていて、何度もうなずいてしまった。『我が子ちゃん』が好きな人はハマると思う。

産めば自動的に愛情あふれる母親になれるわけじゃない。児童館に行っても周りが“理想のママ”すぎて気後れする。“ママ友”を作ろうと思ってもママ自身のパーソナルな話は踏み込みにくいし妊娠育児結婚生活は地雷が多すぎて話題に困る。結局元々の友達と交流するけど、友達も子育てしていないとこれまた話題に困る。孤独になりSNSを見るけどキラキラママを見て自分の育児に自信がなくなり病む。

自分だけひねくれてるのかと思っていたけど、そうじゃなかった。

SNSを真に受けると病む。

読んでいて一番心に刺さったのは「なんでこんなに子育てしにくい世の中なのか?」を的確に捉えて表現してくれていたところ。

作者と同様、私も赤子連れでの外出時は常に不安にかられピリピリしている。

——公共の場で赤ちゃんを泣かせてはいけない。 ——奇声をあげさせてもいけない。 ——足をバタつかせて近くの人に当たるなんてもってのほか。 ——電車内で音の出るおもちゃであやすなんて非常識。 ——ベビーカーで道をふさがないように。 ——多目的トイレの利用は本当に必要な時だけ。 ——ミルクなら授乳室は使わず母乳の人に譲る。 ——子連れは混む時間に電車に乗らない。 ——外出時は靴下や帽子を着せる。——ベビーカーを押しながらイヤホンなんてもってのほか

『産まない選択もある中で、エゴで産んだ責任を果たせ』

夫や周りからは「気にしすぎじゃない?」「赤ちゃんなんだから仕方がないよ」と言われるけど、どうしても気になってしまう。

今までは心の中だけで呟かれていたただのぼやきが、SNSで表面化され、いつの間にか正当化され、常識になっていく。これは子育てをしたことがない人が増えたのもあると思う。けれど決して育児の苦悩を知らない人の意見だけじゃない。子育て経験者が「私はこうしてた」「こうするべき」と、自分の経験を押し付けている部分もあると思う。

私自身も、かつて子育て世代に対して邪険に思っていたことがある。

でも、それを言葉にするのは身の程知らずというか、それに文句を言っている方が世間知らずで幼稚で恥ずかしい、という感覚もあった。実際に今こうして自分が親になってみると、あの時「うるさい」と思われた側の苦労が痛いほどわかるし、「うるさい」と思っている側が何たる無知で傲慢で浅はかかとも思う。

けれどSNSでは歯止めがない。むしろ心のちょっとしたボヤキを吐き出すためのツールでもあるので不満を呟くこと自体は問題ではない。(もちろん時に正論もある)

発信した方は明日には忘れるであろうその一言に、いちいちに過敏に反応し、全ての人の気に障らないように対応しようとすることのほうが土台無理な話なのだ。

でもどうしても「完璧にやらなきゃ」と割り切れない自分もいる。

ルールに縛られすぎて、もう動けない。

SNSを真に受けると「育児の当たり前ルール」に縛られ何もできなくなる。

気をつけなきゃ、気をつけなきゃ、と思っていても、うまくいかないことだって当然ある。どんどん苦しくなっていく。他人がいる場に赤子を連れて行くのが怖い。周りからどう思われるかという自分の評価だけじゃない。もしかしたら今この瞬間「育児の当たり前ルール」を逸脱したせいで赤子が盗撮されてSNSに晒されるかもしれない、一生転載され続けレッテルを貼られるかもしれない、という不安もある。

もちろん、母親として当然やるべきことはある。でも、母親でもどうすることもできない赤ちゃんや子ども自身に矛先が向く場合だってある。そうなるともうダメだ。「うちの子はどうして」と今度は母親が自分の子どもを批評し始める。

心が強い時は「子育てしたことあるやつ以外黙れ」「育児マウントしたいだけなら去れ」と刃向かえるが、心が弱い時は「赤子が泣いたことで人様に不愉快な思いをさせてしまった。迷惑をかけて申し訳ない。自分が生んだ子を何一つ理解できていないしコントロールできない。これまでの育児方法が間違っていた。ひとえに私の努力不足だ。」とどん底に落ち込む。

心が強い時は「エレベーターに乗ってる健常者全員降りろ」と思えるけど、心が弱い時は「ベビーカーで来なければよかった。戦略不足で浅はかだった。今からでもやっと寝ついた赤子を抱き上げ、ベビーカーを折りたたみ、抱っこ紐につけかえてエスカレーターでベビー休憩室まで昇ろうか」などと悩み泣きたくなる。

作者はその後「ちゃんとしなきゃ」にますます追い詰められていくことになるので、読んでいて自分ごとのように悲しくなってくる。

でもリアルな世界は割と優しい。

これまでぐだぐだと鬱々した文句ばかり書いてきたが、現実では私は一度も嫌な目にあったことがない。

靴下を履かせてなくても「かわいそう」と言われたことはないし、ベビーカーで電車に乗っても「邪魔だよ」と罵られたことはない。

むしろスーパーなどのエレベーターに乗れば「可愛いわね何ヶ月?」「あら〜ニコニコしていていい子ね」「(いないいないばあ)」と構われ、電車に乗ればササッとスペースを空けてくれて「こちらの席座ってください」「重そうね荷物持つわよ」と声をかけてもらえる。赤子を褒めてくれるかサポートしてくれる人しかいない。思い出しただけで泣けてくる。

どうしてこういった現実に会った温かい人たちよりも、SNSにいるたたのつぶやきに翻弄されているのだろう。

そう思ってThreadsは消したし、インスタのコメント欄は見ないようにした。でもそれでも、世間の冷たい声があることは心の片隅にしっかりと残って消えはしない。

体型も体力も、産前に全然戻らない。

今までのSNS共感話が全15話ある中の1〜3話なので、超序盤で盛り上がってしまったのだが、他にも第5話の『授乳したらやせるってホントかよ!』もめちゃめちゃ共感した。

通常体型の妊婦は妊娠中「10kgまでなら体重増加はOK」となるのだが、私は自宅安静もありなんだかんだで18kg太った。出産後、体重は赤子と臓器分の4kgほど減るかと思ったが、退院時の体重は18kg増のまま変わらず。信じられなかった。

その後授乳や育児をしていれば痩せる神話を信じ、運動や食事制限を一切してこなかったが、半年間で自然と10kg痩せた。そう、ここで問題がある。

自然と痩せるのは10kgまでなのだ。

つまり余分に増やした8kgは自己努力で痩せる必要があるのである。がーん。

私は定期検診はクリニック→出産は総合病院だったので、割と体重制限を誰にも指摘されなかった。個人産院では太りすぎると、出産時のリスクとなり対応しきれなくなるため厳しく指導されるようだが、総合病院なので毎回診察医は変わるし、最悪どんな妊婦でも対応できる体制もあったかもしれない。結果、とにかく太りすぎたのだ。

実家に帰った際には実父から「お前、痩せる気はあるのか…?」とどんどんおばさんに変わっていく娘を心配された(ただし健康を気遣われた訳ではなくあくまでも見た目だけの指摘だったので盛大に反論してきた)。

日々の写真で夫と赤子の写真はいっぱいあるのに、私と赤子の写真が少ないので夫に文句を言ったこともあるが、いざ撮影されたらされたで自分のすっぴんどすこいの写真が嫌すぎて頼まなくなった。

この漫画の中でも「自分の写真が嫌」「適当に買ったマタニティ服を産後もずっと着ることに」「他のママたちがキレイ過ぎる」といった描写がありずっと悶えながら共感していた。

他にももっといろいろ共感した点はあるのだが、既にめちゃめちゃ長文になってしまったため、そろそろ打ち切ろうと思う。気になった方はまずはインスタに投稿されている漫画から見てみてもいいかもしれない。

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