赤子をベビー室に預けて思うのは、普段どれだけ赤子に意識が向いていたかということだ。
気づいていなかったけど、私はあの小さく不安定な生命体が「呼吸をしているか?」をいつ何時でもチェックしていた。ベビーモニターがあるのに、だ。そう思うと、日々の疲れは単に慣れない育児をしているせいだけではなく、子育てというプレッシャーや責任感からの緊張もあったのだろうと思う。
なので産後ケアが真に解放的なのは、赤子の面倒をプロが常に見てくれるという点だ。夫や母に任せた時の心残りや不安というものが一切ない。むしろ赤子にとっても私が面倒を見るよりいいのでは、とすら思う。それほど安心できるし懸念がいらないところがいい。
けれど心配が一切ないのにも関わらず、初日の夜はなかなか寝付けなかった。嬉しさと非日常に興奮していたのもあるが、シンプルにベッドと枕が硬かったせいだ。あくまでもここはホテルではなく病院・施設なんだと思い知らされる。さながら合宿所だ。
ぐっすりは寝れなかったけど気分は最高のまま朝を迎える。授乳をしてから豪華な朝ごはん。今日も今日とておかずの品数も多く、米がうまい。フルーツもある。紅茶もある。それだけで「来てよかった」と感じる。
帰りにもう一度ベビー室に立ち寄ると、赤子がバウンサーに座りながら、じーっと保育士さんを観察していた。我が家にはバウンサーがないので初めてバウンサー利用をしている姿を見る。気に入ってる…?助産師に吐き戻しが多いと相談したら、「授乳後30分は縦に抱いてて」と言われたことを思い出る。なるほど、バウンサーならずっと抱っこをしなくても傾斜を維持することができる。バウンサーの購入も視野に入れておくか。
赤子の機嫌が良かったので、預け入れ可能時間までベビールームにて記念フォト撮影をした。
これは産後ケアを予約した時から狙っていたサービスで、備え付けの袴風ベビー服やら草やらメッセージカードやらをお気に召すまま飾り付けてセルフで撮影するというもの。このためだけに持ってきたミッキーやジェラトーニのぬいぐるみも並べて赤子をパシャパシャ連写する。家では記念撮影なんて全くしてなかったし、お宮参り等もしていなかったのでちょどよい。50日経ってないけど「50days」って飾りをしれっと添える。
何が最高って、好き勝手やっているからか、誰もこの部屋に来ないところ。まあ皆産後疲れで写真なんて撮ってる余裕がないという方が本音かも。プロのカメラマンにお願いする訳でもないのでセッティングの手間や写真のクオリティは自分次第という点はあるものの、お気楽でこれまたちょうど良い。自分のペースで、「いいね」映えする角度を追い求める。赤子があくびをしたら連写してあたかも笑っている風な表情を撮る。これでよし。大量に撮った写真を厳選し、「みてね」にアップして任務完了。やり切ったぞ、私。
午後は、夫に内緒でマッサージサービスを受けてみた。1コース8000円。
お高いけど、骨盤と肩と首がバキバキなので「もうこれは医療費」と自分を言い聞かせる。アロマとヒーリングミュージックが流れる空間でアイマスクとバスタオルに包まれ受ける全身マッサージは、本当に極楽であった。終わった後はもう、体も心もリラックスしきっていた。痛みも軽減している気がする。何より「自分の美容に投資している」という女としての自己肯定感が爆上がりした。私は母でもあるけれど、31歳の大人レディでもあるのだ。ただ残念だったのは、数時間後にはしっかりバキバキな身体と骨盤の痛みが元に戻っていた。つかの間の幻だったのかしら…。
大満足の1日となり、晩ごはんを食べた後は21時になるまで赤子と母子同室をする。18時に授乳をしたのでそのまま寝続けてくれるはずが、20時に起き出しまさかの泣き出し。まだ2時間しか経っていないからミルクを飲ませるわけにもいかない。もうこれまで築き上げたルーティンが崩れ始めた?
ここからが戦いだった。部屋の照明を全部消し、廊下から差し込む光を布で隠し、赤子をおくるみでくるんで目には私のアイマスクを、口にはお気に入りのおしゃぶりをIN。抱っこで揺らし鼻歌を歌いながら時間が過ぎるのを待つ。段々と落ち着き泣きは遠のいたものの、赤子をふと見るとその絵面は完全に「誘拐され拘束されている人質」。なにこの罪悪感。目も口も手足もふさいでるけれど、でもでも現代社会で本当に許されている育児方法なんです、と誰に言うでもなく言い訳してみる。
なんとか21時になり、速攻でベビー室に移動する。けれど急にランランと明るい蛍光灯の下にさらされ、旧式のうるさいエレベーターに乗せられたことで、大人しくなったはずの赤子はギャン泣き。「すみません、さっきまで寝てたんですけど…」と謎の謝罪をしながら、あとは保育士さんに託す。こればっかりは私も赤子も悪くない。施設の設計ミスである。
ともかく、無事今日の夜もおひとり様時間を手に入れた。ありがとう、産後ケア。ありがとう、保育士。ありがとう、助産師。ありがとう、区のサービス。明日はもっといい1日にするぞい。
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